岡本行夫公式サイト

2017年7月5日

北朝鮮ICBM発射実験、中露の反応

(2017年7月5日「ユアタイム」より)

 今回の北朝鮮ICBM発射実験に対する中国・ロシアの反応は、アメリカに対する嫌がらせでしょう。アメリカと韓国が軍事演習を止めたからといって、北朝鮮の態度に変化が見られることは絶対にありません。北朝鮮がそのくらいのことで核開発を止めてくれるならば、そんなに苦労はしません。中国とロシアは、北朝鮮は変わらないということを見越した上で、アメリカに対して「お前も悪いんだからやめろ」と言っているわけです。

 それよりも深刻なことは、中国とロシアが、アメリカの描く北朝鮮押さえ込みの構図から離れていってしまっているということです。彼らは基本的には北朝鮮という緩衝国家があった方がいいのです。そのためには北朝鮮の体制が崩壊すると困る。韓国主導で米軍を抱えたままの形での朝鮮半島統一というのは、中国・ロシアにとって絶対に嫌なことなのです。

 4月の米中首脳会談のときは、習近平主席も大変したたかな政治家ですから、トランプの機嫌を損ねないように上手くやりました。しかし、北朝鮮を潰そうとは思っていない。この秋に5年に一度の共産党大会という非常に重要な会議が開かれます。そこで習主席は完全に権力を掌握しなければいけない。党内では習近平主席の足を引っ張る人たちもいるわけです。北朝鮮をあまりにも押さえ込みすぎると、その人たちが「やりすぎじゃないか」と反発する。いま習主席は、党内で、外交問題で足を引っ張られるようなことは絶対にしたくないのです。

 プーチン大統領も、アメリカ及びNATOが自分たちを押し込んできたという被害者意識があるので、ここで反転してもう一回巻き戻すという戦略的な構想を持っているでしょう。今ロシアがアメリカに対してきつく出てきているのは、決して状況対応的にそれが一番良いと思ってやっているのではなく、構造的かつ長期的な政策としてやってきています。この方向が変わることはないと思います。

 北朝鮮の状況は悪い方向に行っています。結局、誰が何を言おうと、金正恩委員長は、アメリカまで届く長距離の弾道ミサイルとそれに搭載する核弾頭の開発は絶対に止めないでしょう。金正恩体制が持ってしまった後、さあどうやって既存の核保有国となった北朝鮮と交渉して、彼らが持っている核弾頭やミサイル及びミサイル技術を削除していくのか。非常に難しい長い交渉になっていきます。

 アメリカはこれから制裁をかけ続け、さらに強化すると同時に、自分達の防衛体制をもっとしっかりさせていくでしょう。1980年代にアメリカはSDI計画を大々的に実施しました。ソ連の核ミサイル2万発が秒速8キロで宇宙空間を飛んでくる、それをことごとくレーザー光線で撃ち落とすという、とんでもない壮大な計画です。SDI計画がほとんど完成に近づいた時、それもあってソ連邦は崩壊していきました。結局はそういう形で自分達の体制を強化していくのではないでしょうか。そのことは日本にとっても利益になります。アメリカが国を挙げてやれば、そうしたことは可能だと思います。