岡本行夫公式サイト

2017年5月29日

憲法9条

(2017年5月29日「プライムニュース」より)

 今回、安倍首相が「現行の憲法9条に、自衛隊について明記する」といった議論を、国民に対して提起したのは良いことだと思います。70年間一回も触っていない界最古の成文憲法です。9条は明らかに舌を噛みそうな書き方で書かれていますが、これが本当に日本にとって最も必要な安全保障の一番の礎かというと、これはやはり変えた方がいいと思います。一項で戦争を放棄して、二項で戦力を放棄する。しかしこれでは自衛隊のことが宙に浮いてしまので、「前項の目的を達するために」という芦田修正によって国際紛争を解決する手段としての戦争でなければ、つまり自衛戦争ならば、いいんだというように、裏の解釈でやり過ごしてきたわけです。

 これは当時の特殊な状況の下で書かれたものであって、歪んだ書き方だと思います。さて今度は、それを「加憲」というやり方で、それを保持したまま書くのがいいか。これまで70年間触れなかったものを、今度9条を触ってしまえば、これであと50年ぐらいは触れなくなると思います。50年が言い過ぎだとすれば、30年は触れられない。そうすると、「加憲」の場合は、一項、二項の歪みをそのまま30年間固定化したまま、またもっていくのかという議論もありうると思います。せっかく総理がそういった問題提起をされるのであれば、一項の戦争放棄はもちろんそのままにして、しかし二項の代わりに、「日本の独立と平和を確保するための自衛のための軍隊をおく」という条文を入れてすっきりさせてしまった方がもっといいわけです。

 ただ、総理の判断で、政治的な抵抗が多いだろうということで折衷案的に一項二項はそのままにして三項を作るということなのでしょう。これが確立して固定化してしまうということが、本当に国家としての体系にとって良いことなのか、一度、国民的議論をした方がいいと思います。

 今の安倍総理の考え方というのは、それはそれで一つの立派な考え方だと思います。これから憲法審査会で議論していくことだと思いますし、総理が言われているように、とにかく自衛隊をきちんと憲法上に位置付けするということ、それは大事なことです。あとは立法技術の問題でもあると思います。

 ただ一つ私が気になりますのは、70年触ってきていない憲法ですから、いろんな条文を同時に触るというやり方です。そうすると、大学教育を無償化するとか私学助成を可能にするとか、いろんなことが出てくる。こういう美味しい部分と、きちっと正面から議論して国民的同意を得るべき9条改正のような事項を一緒にすることに不安はあります。国民投票となると逐条審議になっていきます。各条文毎に○×を付けていきますから、そうすると9条だけ×になってしまう可能性もあるわけです。私は今の日本国家の憲法の中で最も重要かつ深刻な問題である9条の問題だけを、他の条項改正とは別に、「さあ国民のみんなで考えよう」と正面から提起すべきじゃないかという気もします。