岡本行夫公式サイト

2017年5月29日

「G7サミット」①

(2017年5月29日「プライムニュース」より)

●中露抜きのG7サミットの影響力は?

 中国とロシアはG7サミットの声明を気にしていると思います。もともとこのG7サミットというのは、自由、民主主義を信奉する仲間同士での会議として始まったわけです。その後ロシアがその仲間になれるかと思って入れてみたら、とんでもなかった。結局、ウクライナであんなことをしてしまったから、出ていってもらったわけです。中国は「入れ」と言ってもって入りません。彼らにとっては国連の安保理が一番の大事なところです。そこで自分達は拒否権を持っており、好きなことがやれるわけです。どうしてわざわざG7に入って、多勢に無勢で皆に押さえ込まれなければならないのかと、そういうことでしょう。

 もともと西側の価値観を共にする国の首脳だけが集まり、そこで基礎を固める意義でいいんじゃないでしょうか。そういう意味では、今回も、基礎が固まり、そしてその結束力を国連や他の場で発揮していくということでしょう。

●NATOの東方拡大とロシア

 日本が北方領土交渉を抱えロシアに対して他の国と足並みを揃えて強く出られないということは、各国も認識しているわけです。だけども、それがあまりにも突出するようなことになってしまっては、西側の協調が崩れてしまいます。

 私はロシアについてちょっと個人的に別の考えを持っています。バルト三国へのロシアの圧力とか、それを超えてポーランドにロシアは圧力をかけていくのではないかとかヨーロッパは心配していますが、ロシアにしてみますと、1991年にソ連邦が解体したときに西側のNATOとの間で、「双方これ以上踏み込んでこない」という了解があったと考えているのではないかと思います。ところが、どんどんNATOが東方に拡大していった。1999年にはポーランド、チェコ、ハンガリーをNATOに入れ、特にロシアにとってショックだったのが、2004年にバルト三国もNATOに入れたことです。

 そうなると、NATO諸国とロシアが直接に国境を接することになる。ロシアが仮にバルト三国に軍事侵攻すれば、NATOが戦争を開始するというギリギリの線ができてしまった。西側がロシアの期待に反してここまできたのではないか。ここにロシアの危機意識があるのではないでしょうか。ロシアに対して同情的になっているわけではありませんが、彼らの発想を理解する必要がある。20年間、ロシアはずっと押しこまれてきたことに対する反動が今出てきていると思います。だからNATOはロシアともう一度どうするのかを考える必要があると思います。「ウクライナをNATOには入れない」とするのか、あるいはロシアが「ウクライナに対してここをきっちり守ってくれるなら、我々はドネツクとルガンスクから手を引く」とか。

 G7各国は、日本以外は皆NATO諸国です。G7はロシアと話をする必要があると思います。歴史的な視野に立った話をすべきです。日本はそれを促す役割というか、日本だけがその問題で圏外に立つわけですから、日本がロシアに対して独自のスタンスを持つことはむしろ当然のことではないでしょうか。

●南シナ海についてのG7サミット首脳声明への中国の反応

 中国は、各国を個別撃破していこうという戦略です。ASEANに対しては、それが成功しているわけです。中国に対する国際的な非難の高まりは、もうこれで一段落したと思っていたんでしょう。ところが、G7サミットで、南シナ海に関する強い声明「国際ルールを守れ、法秩序を守れ、仲裁裁判を守れ」と言うことが出てきた。「中国」という名前は使っていませんが、中国を指していることは明らかです。それに対してこれだけ強い反応を中国が示しているということは、効果が出ていると言えるのではないでしょうか。

 何でも傍若無人にやれるものではないんだということを中国に伝えなければならない。アメリカと日本が文句を言うことは織り込み済みだが、ヨーロッパまでこれを一緒になって言ってくるので、中国の反発が強くなっているのは当然でしょう。