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読売新聞「論点」
日本の国家像 議論必要 - 二分化する世界 -

先週、ブッシュ大統領の一般教書演説があった。共和党だけが拍手する場面が、例年より多いと見えた。米国では明らかに二分化が進んでいる。ブッシュ大統領の求心力は低下し、それが、米国民を統合する役割を一層難しくしている

米国は傷ついている。深刻なのは外交政策だ。誤った情報に基づいたイラク開戦、イラクの刑務所内での虐待やキューバ・グアンタナモ収容所での捕虜の処遇などが米国外交の倫理性を揺さぶっている。萎縮した米国は、スーダンで数十万人が虐殺されようと動こうとしない。

世界全体も二分化されつつある。ベネズエラ、ボリビア、アルゼンチンなどの南米諸国の過激化、パレスチナでの過激派ハマスの大勝、核保有に突き進む強硬イラン、人権抑圧を強めるミャンマーと一部中央アジア。理由はそれぞれ異なるが、反米行動が当然のこととして受容される風土と経緯が多くの国々にある。

韓国では軍事政権時代に迫害された世代が、今や国家の中枢部分を占める。「韓国の急速な米国離れは、この世代が暗い軍事政権の背後に常に米国の姿を見ていたからだ」と、米国の高官が述懐していた。

米国が主導する国際秩序が形成できなくなっている。その反面、中国、そして少し遅れてインドのすさまじい興隆がある。世界銀行の統計によれば、購買力平価では、すでに中国が世界の第2位、インドが第4位の経済規模だ。巨大人口のこの二つの国が必要とするケタ違いの資源・エネルギー量が原油価格を高騰させている。とりわけ中国は、世界で飛び抜けた外貨準備を背景に、中東の原油やアフリカの鉱山と、世界中の資源を囲いこむ戦略だ。

欧州は内部統合に精力を費やし過ぎて、欧州域外へ押し出す力が低下した。中国、インドの台頭は、真の意味で「米欧の時代」の終焉をもたらしつつある。

自由経済とグローバリゼーションは勝者を作り出した。米国、中国、インド。一方、中南米、アフリカ、欧州などの地域に多くの敗者が出た。貿易自由化を目指す多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は行き詰ったままだ。自由競争と強力なITツールの出現は、成功者と非成功者の格差を拡大している。

宗教も結果的に二分化を促進している。米国の宗教右派やロシア正教会がもたらす保守化。特に、イスラム過激主義の伸張は、中東の緊張を激化させているばかりでなく、世界に大きな影響を与えている。欧州の人種暴動の一因ともなった。

こうした大きな動きの中で、日本はどのような国家像と骨太の戦略を求めていくのか。靖国、沖縄、牛肉と、個別の事象についての論議ばかりが白熱する。欠落しているのは、世界の中で日本を中長期的にどのような国にするかの議論だ。中規模高性能国家として、世界で新たなパートナーを作っていくこと。十年後に結実する人的交流作業を中国と立ち上げること。やることはたくさんある。蝸牛角上の争いをしている時ではない。

読売新聞「論点」 2006年2月9日 朝刊11面

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